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伊豆の南温泉が湧き出ている

伊豆の南、温泉が湧き出ているというだけで、



他には何一つとるところの無い、
つまらぬ山村である。

戸数三十という感じである。

こんなところは、
宿泊料も安いであろうという、
理由だけで、
私はその索寞たる山村を選んだ。

君は黙ったまままじまじと目を光らせながら、
私の言う事を聞いていた。

私が言いたい事だけをあけすけに言ってしまうと、
君はしばらく黙りつづけていたが、
やがて口のすみだけに始めて笑いらしいものを漏らした。

それがまた普通の微笑とも皮肉な痙攣とも思いなされた。

輸入ことに父なきあとの一人の母、
それだから省作はもう母にかけてはばかに気が弱い。

のみならず省作は天性あまり強く我を張る質でない。

今母にこう言いつめられると、
それでは自分が少し無理かしらと思うような男であるのだ。

むかし湖南の何とやら郡邑に、
魚容という名の貧書生がいた。

どういうわけか、
昔から書生は貧という事にきまっているようである。

この魚容君など、
氏育ち共に賤しくなく、
眉目清秀、
容姿また閑雅の趣きがあって、
書を好むこと色を好むが如しとは言えないまでも、
とにかく幼少の頃より神妙に学に志して、
これぞという道にはずれた振舞いも無かった人であるが、
どういうわけか、
福運には恵まれなかった。

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