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私は、その度毎に心の中で、強く答える。僕は、
はじめから俗物だった。
君には、
気がつかなかったのかね。
逆なのである。
文学を一生の業として気構えた時、
愚人は、
かえって私を組し易しと見てとった。
私は、
幽かに笑うばかりだ。
とにかく君は妙に力強い印象を私に残して、
私から姿を消してしまったのだ。
その後君からは一度か二度問い合わせか何かの手紙が来たきりでぱったり消息が途絶えてしまった。
岩内から来たという人などに邂うと、
私はよくその港にこういう名前の青年はいないか、
その人を知らないかなぞと尋ねてみたが、
さらに手がかりは得られなかった。
輸入五日ばかりしてまた省作は戻ってきた。
今度はこれきりというつもりで、
朝早く人顔の見えないうちに、
深田の家を出たのである。
母は折角言うていったんは帰したものの、
初めから危ぶんでいたのだから、
再び出てきたのを見ては、
もうあきらめて深く小言も言わない。
落第書生の魚容は、
この使い烏の群が、
嬉々として大空を飛び廻っている様をうらやましがり、
烏は仕合せだなあ、
と哀れな細い声で呟いて眠るともなく、
うとうとしたが、
その時、
もし、
もし。
と黒衣の男にゆり起されたのである。