忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

私は絶えず昇らなければ

私は絶えず、昇らなければならぬ。東京市の



大地図を一枚買って、
東京駅から、
米原行の汽車に乗った。

遊びに行くのでは、
ないんだぞ。

一生涯の、
重大な記念碑を、
骨折って造りに行くのだぞ、
と繰返し繰返し、
自分に教えた。

人とは言うまい、
犬とでも、
花とでも、
塵とでもだ。

孤独に親しみやすいくせにどこか殉情的で人なつっこい私の心は、
どうかした拍子に、
このやむを得ない人間の運命をしみじみと感じて深い悒鬱に襲われる。

君も多くの人の中で私にそんな心持ちを起こさせる一人だった。

輸入省作、
お前あの家にいないということがあるもんか何べん繰り返したかしれない。

頃は旧暦の二月、
田舎では年中最も手すきな時だ。

問題に趣味のあるだけ省作の離縁話はいたるところに盛んである。

某々がたいへんよい所へ片づいて非常に仕合せがよいというような噂は長くは続かぬ。

叱るのではない。

とその黒衣の男は、
不思議な嗄れたる声で言って、
呉王さまのお言いつけだ。

そんなに人の世がいやになって、
からすの生涯がうらやましかったら、
ちょうどよい。

いま黒衣隊が一卒欠けているから、
それの補充にお前を採用してあげるというお言葉だ。

PR